映画館で映写装置に不具合が生じ上映が中断した、の巻
先日、渋谷の映画館・ユーロスペースに、「みんなのジャック・ロジエ」特集の中の「メーヌ・オセアン」という作品を観に出向いた。
1980年代半ばのフランス映画である。
観映していると、残り30分と思われる辺りで、画面がすうっと黒くなった。
溶暗の多い作品だったので、私は最初は、「これも溶暗の効果の一つで、ちょっと長めの溶暗なのかな?」と思いつつ、流れるピアノの音楽だけを聴いていたが、いつまでたっても次の画面が出て来ない。
ーーーちょっとおかしいぞ!
するうち、音楽も、プツリと消えた。
そこで完全に、これは劇場側の何かのトラブルだと気がついた。
と、劇場内が明るくなり、スクリーンは真っ白になった。
それから何分後かに、劇場スタッフさんと思われる マイクを通した男性の声が、場内に響いた。
「大変申し訳ありません。只今、映写装置に不具合が生じてしまいまして、急いで復旧作業を行っております。大変申し訳ありませんが、それまでお待ちください。」
私達観客一同は、全員、席に着いたままで、静かに待った。
ーーー20分ほど経った頃だろうか。
今度は女性スタッフさんが、劇場扉を開け、扉の前に立ち、「大変申し訳ありません。映写装置の復旧のメドが立たないので、お客様がた、半券を払い戻すか、次回、無料でご覧になれるチケットとお取り替えしますので、受け付けにお越しください。本日は大変に申し訳ありませんでした。」と仰り、扉から去った。
私達観客は、誰一人文句を発する者もなく、すみやかに座席を立ち、受け付けに向かい、一列に並んだ。
そして、払い戻しかチケットかの希望を伝え、手続きを済ませると、ユーロスペースを出て行った。
受け付けのスタッフさんは、一人一人に「大変申し訳ありませんでした。」と頭を下げていた。
今の時代、映写装置は、ほぼ全てと言っていい率の映画館で、フィルム上映ではなく、DCP(デジタルシネマパッケージ)である。ユーロスペースも例外ではない。
今でもフィルムに拘って、映写技師さんが映写機を回しているのは、私が知る限り、杉並区・阿佐ヶ谷のラピュタ阿佐ヶ谷だけである。
フィルムは、たまに、途中で切れたり止まったりと、不具合が生じてしまうものだが、DCPでも、このような不具合が起ることもあるのだ!この回に観に来たという事は、ある意味、非常に非常に貴重な体験かも知れないな、と思った。
DCPの不具合で、ラストの30分が上映不可能になってしまった事態に対して、スタッフさんがたは、十二分に、埋め合わせになる対応をしてくださったと思う。
ユーロスペース、また観たい作品が見つかったら、出向こうと思った。
この記事へのコメント
我流麺童
そろそろ大画面と音響を楽しみたいですね。
hirometai
いろんなハプニングが起きますが、関係者の対応で気持ち良く受け止められることがあります。
スタッフの皆さんの心が伝わりますね。
kazukun2626
kousaku
kinkin
投影ですからね。
溺愛猫的女人
imarin
それでもなかなか無いアクシデントなので逆に思い出に残りそう。
小さな映画館私も好きです。
りみこ
最後の30分という微妙な時間帯が何とも先が気にかかるところな気がします
近いうちに再度行かれるのでしょうか?
斗夢
あちこちで上映したあとでしたから、フィルムは
傷んでいたんでしょうね。
みち
親切な対応を受けると、その場所がますます好きになりますね。
Boss365
「映写装置に不具合が生じて・・・」は残念です。
大昔は似たような事あり・・・
一部カットされ上映された事ありました。チケット代は払い戻しあり。
最近はデジタルなので、遭遇しない場面ですね!?(=^・ェ・^=)
青い森のヨッチン
猛暑の中、電子機器もまいっちゃったのかも?
東京でもフィルム映写で頑張っているところがあるのですね
きっとこだわりがあってのことなのだろう
リンさん
1回は、途中から始まった。明らかにおかしいので「途中からになってます」と言いに行ったら「こういう始まり方です」と言われ、仕方なく観ていたら、30分で終わってしまいました。
さすがに次回の無料チケットもらって帰りました。
2回目は、途中で10分ほど中断してしまい、アナウンスが流れて再開されたのですが、観客の緊張が切れてしまい、おしゃべりや携帯を使う人が続出で集中できなかった。
どちらも同じ映画館です。
あれ以来行ってません。
newton
sakamono
不具合が生じるとは。機械だからそういうこともあるのでしょうが。
昔々、古い小さなユーロスペースに行ったことがありました。
新しくなってから、友だちに誘われて1度だけ行ったことがあります。
ロートレー
お客さんも、一生懸命頑張る映画館を応援したいと思うようになりますよね^^
拳客
hana2023
トータン
そらへい
学校の講堂で大勢が集まって見ていました。
途中でフィルムが切れるのは当たり前の事態でした。
そのころ以来、映画が途中で止まるのは経験したことがありません。
今はDCPというもので上映されているのですね。
kick_drive
見ると映画館の設備の情報がマニアックな感じで掲載されてますね。
ちっともわかりませんが(笑)。
あり得ないとは思いますが、映写室の見学も出来たら
理解できなくてもお邪魔したくなりますね。
昔、テレビを観ていて不具合が起こると良く「しばらくそのままで
お待ちください」と表示され結局放送中止になったりもありましたね。映画館の職員さんたち必死だったでしょうね。悔しいだろうな。
ヨッシーパパ
スタッフ並びに、観客の対応が素晴らしいです。
sana
あと30分のところでとは、残念でしたが。
スタッフさんの対応が丁寧で、お客さん達もみな静かに待って、いい空間で過ごせましたね。
八犬伝
でも映画館の対応は満点ですね。
werewolf
誰一人不平不満を言わないってところが素晴らしい。
騒いだってどうにもならないですものね。
kiyotan
映画には遠ざかってしまいました。
よく見に行っていたんですが。
対応がちゃんとしていましたね
観客もそれを受け止めて さすがです。
わたし
でも劇場はこれをチャンスととらえて、精一杯な事をすれば顧客は絶対増えます。
最悪は「二度と行かない」と思わせてしまう対応ですね
mau
つぐみ
対応次第では腹が立つこともあるでしょうからクレームが無かったのは対応がよかったのですね。
いつでもトラブルがあっても気持ち良く納得して終わりたいものです。
風の友
私は、経験したことありません。
ユーロスペースさんちょっと可哀想です。
よいこ
対応も誠意を感じられますし、いいお客さんたちでしたね
猫の友 メルティー
場に応じて集まる人たちの人格も同じタイプなのでせう。
交通費出せ!とか、クレーマーもいなかったようですね。
KINYAN
Rchoose19
映画の映写の仕方も時と共に進化しているのですね。
鑑賞的には未消化の部分もあったことと思いますけど、
機械の不具合ばかりはねぇ。。仕方ないですねぇ。
ぽちの輔
フィルムが途中で切れたりするよりも
復旧に時間が掛かっちゃうのかも?^^
Take-Zee
ラスト30分でトラブル発生、残念でしたね。
なんとなく不完全燃焼だったと思います (^-^)!
ファルコ84
絶対最後まで観たいですね。
機械でのトラブルでは、仕方がない。
横 濱男
仕方がありませんね。
人生、こんな時もあるさ。。。気分で行かないと。。(^^)
ぼんぼちぼちぼち
そうなんでやすよ、フィルム時代ではなくなったのに、こんなことあるんだ!って、まず、そこに驚きやしたね。
でも、デジタルの専門家のキンキンさんの言によれば、あるあるなのでやすね。
事実、リンさんさんは二度もトラブルに遭遇されてるのでやすね、newtonさんも音声が途切れたご経験が、、、
デジタルシネマパッケージというのは、、、パッケージと名がついているから、カセットテープみたいな箱に入ってる物を思い浮かべがちでやすが、物理的に存在するテープでも盤でもなく、デジタルシネマの規格で定められたデータ構造のことでやす。
だから、短的に言い切ってしまうと、コンピューターの中に入ってる情報、と解していただくと解りやすいかと思いやす。
それにしても、多くのみなさんがご指摘のように、ユーロのスタッフさんがた、最上級に丁寧な対応をしてくださいやした。
スタッフさんがたお若いのに、すごいなあと、思いやした。
これはあっしの個人的主観ではあるんでやすが、大手シネコンよりミニシアターのほうが、スタッフさんに、映画を心底愛する愛が深い人が多いように感じてやす。
そして、観客も、ミニシアターに観に行くようなタイプの観客というのは、「今日どこ行く?ヒマだから映画でいいんじゃね?」とか「これ流行ってるから、一応、押さえとこう」というようなノリではなく、ほんとうにその映画作品が観たくて、やってきている。
観客のほぼ全員といっていい人が、一人できてやした。
だから、心底映画好きのスタッフさんだから、自ずと「ほんとうに申し訳ありませんでした」という言動が出て、心底映画好きの観客だから、映画館側の事情にも思いが至るので、「それなら仕方がないですよね」というスマートな態度になったのだと思いやす。
リンさんさんが行かれた映画館のスタッフさんの対応は、ダメでやすねー。
そんなこと二度もあったら、もう行きたくないでやすよね。
残り30分が観られなかった件んの作品、再度観に行くか、、、あっしのスケジュールの都合で、無理そうでやす。
やはりちょっとモヤモヤしやすが、そこは、この映画を勧めてくださったかたにお聞きしようと思ってやす。
映画館に限らず、飲食店でも何の業種でも、トラブルが生じた時の対応というのは大事でやすね。
対応いかんで、「こんなとこ、もう二度と来るか!」と嫌な気持ちだけが残るか、「なんて素晴らしい対応なんだ!ここ、ますます好きになっちゃったよ!」と思うか、両極に分かれやすもんね。
kuwachan
私は今までにそのような経験はありませんが
機械のことなのでそういうこともあるでしょうね。
drumusuko
トラブルは何でもつきものですので、その後どう対処するかで、トラブルを起こした人や店などの価値が決まると思います。いい体験でしたね(^^♪。
フヂ
お店なんかでも、対応の仕方によって
その後リピーターになるかどうか
決まったりしますよね。
TaekoLovesParis
suzuran
しばらく続くなんてことがありました。
デジタルになってからは、映写技師も要らなくなったということで
映画館も大きく変わりましたね。
英ちゃん
yamatonosuke
ぼんぼちぼちぼち
いえ、記事本文にも書いてあるように、半額返金ではなく、全額返金かまたは次回無料で観られるチケットの選択でやしたよ。
もしも、半分以上は観たんだから半額返金ね、と、半額返金だったら、観客はみな怒りやすよ。
映画って、全編を観て初めてその作品のなんたるかが掴めるので。
なので、今回のユーロのスタッフさんがたの対応は、見事なものでやした。
あっしも含めて、「ああ、またユーロスペースで観よう!」と思った観客は多かったと思いやす。
つくづく、アクシデントがあった時の対処の仕方、大切でやすねぇ。
日頃からスタッフさんがたがどんな気持ちでお仕事に向かわれているか、お客さんの気持ちを考えているかが出やすね。
仰る通り、ユーロスペース、他ではなかなか観られないいい作品をかけてくれやすね。
あっしが、過去にユーロで観た作品で特に印象に残っているのは、「不思議惑星キンザザ」と「勅使河原宏と安部公房が組んだ作品集」でやすね。
いずれもまだ、桜ヶ丘に在った頃でやした。
フィルム上映されているのは、これも記事本文に書いたように、あっしの知る限り、東京では、ラピュタ阿佐ヶ谷だけでやすね。
ここは、フィルムで映写技師さんが映写機で映写する、ということをウリにしてる劇場でやすね。ガラス張りの窓から、映写技師さんのお仕事の様子が覗けるようになってやす。
今は、映写機で上映することがウリになるくららい、映写機上映が稀少なものになってしまったんでやすよね。
フィルム交換時にとぎれる、、、これは、映写技師さんの腕があまり良くないでやすね。
上手い技師さんだと、どこで別のフィルムになったのか判らないように次に移りやすからね。
ともあれ、ぼんぼち、今回、貴重な体験をしやした。
しかも、ユーロのスタッフさんがたの適切な対応で、気持ちよく劇場を後にすることが出来やした。
そして、ユーロスペースが、ますます好きになりやした。
JUNJUN
映画館側の対応もグッドだと思います。
お客さんが誰一人キレなかったというのもよかったですね。
きっと客層のいい映画館なんでしょうね。
上映作品は80年代のフランス映画ですか。
古いフランス映画は、いい映画が多いですよね。
JUNKO
ぼんぼちぼちぼち
考えてみたら、他のデジタル機器でも、時折不具合起こすことがありやすもんね、DCPが不具合起こしても不思議ではないんでやすよね。
へい、スタッフのかたがたの対応もグッドだったし、観客全員の行動もスマートでやした。
80年代のフランス映画を観に来るお客さんって、相当に映画好きな人ばかりだから、映画や映画館に対する愛や敬意が深いのだと思いやす。
ぼんぼちぼちぼち
フィルム時代はよくあったようでやすね。
切れたり傷がついていたり、、、
何事も時代とともに、デジタル化してゆきやすね。
yokomi
映像が先に切れたので、投影装置の不具合で絵が再生出来なくなり、それに気付いたスタッフが音声を止めたのでしょうか。私は年に数える位小さな投影会をしていますが、出来るだけ現地のモノを使い、そして予備に個人のパソコンとプロジェクターを持って行きます。
ぼんぼちぼちぼち
おお!16ミリの資格者でいらっしゃるとはすごい!尊敬でやす!
そして上映会まで開いておられるとは!
ああ、このトラブル、もしかしたら、仰る通りの流れだったのかも知れやせん。
ちょうど劇中で登場人物がピアノをひくシーンだったのでやすが、真っ暗な中、かなり長い間、ピアノの音が流れて、そして、プツリと止まり、場内が明るくなりやした。
ともあれ、とても貴重な体験となりやした。
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