庭から玄関扉に向かって ゆらゆらと進みゆく 粒子の粗く かつ 彩度もにぶった 音のない 数秒間の映像-----
これが、私の中の もっとも古い記憶です。
父に抱きかかえられ 今日から住むのだという 福岡の 通称「ハウス」と呼ばれていた 米兵家族が使っていた 木造平屋の住宅に 着いた日のことです。
私は 三歳でした。
それから 白いペンキで塗られた 低い木の柵の内側のハウスの世界で 私は 記憶を重ねてゆきました。
庭のまんなかの 大きな株の雪柳をたたいて 小雪吹雪にまみれてみたり
コンクリートのテラスの ざらざらの質感と冷たさを 足の裏で知ったり
蛙の声に 雑草に分け入り 白柵ぎりぎりまで長靴を潜入させてみたり
枯葉の匂いの中 ひしゃげたうずらの卵のような 何かのさなぎに驚いて 尻もちをついてみたり
勝手口脇に下がる南天の実を 粉っぽいだけなのに 赤いという理由で 幾粒も食んでみたり・・・・・
今も残る 東京でいうと福生のような 基地のある町の ハウスの脇を通りがかると
私の前には かならず あの頃の映像が 廻りはじめます。
そして 最後の数秒間は あの 粒子の粗く 彩度も低い 無音の 玄関扉です。
私は そのたびに とても小さな 単純な塊へと 縮んでゆくのです。
この記事へのコメント
hatumi30331
人の記憶ってすごいですよね。自分でも不思議なことを覚えていたり、何でこんなふうに覚えてるのかなあ?って、あやふやなもの。
多くは、人からの話しや、写真、自分の思いが重なって、作り上げられた記憶らしいです。 事実も入ってるから、ややこしい。(笑)
ぼんぼちさんのは、忘れたくない記憶が、時々わき上がり、忘れるんじゃないぞ!って言い聞かせてるような感じでしょうか?
私にも、似たような記憶があります。
ひいばあちゃんにお話を聞かされてるんですが、写真があります。
その刷り込みか?とも思います。
他にもいくつか・・・・。やっぱり時々、思い出すので、忘れませんね。 それは、きっと忘れては行けない何かがあるのだと思います。
cobachi
そして、キーになるものに合うと今も思い出します。
単純だからこその敏感さがあるのでしょうか。
幼いときは自分の周りの世界はもっともっと自分に近かった気がします。
大人になるとフィルターを何枚もかけていくのでしょうかね。
ぼんぼちぼちぼち
おはようございやす。
そう(◎o◎)bなんでこんなこと憶えてるのかなぁっての ありやすよね。
なるほど あっしの意識下の心理が「忘れちゃいけないぞっ」って言ってるのかもでやす。
忘れてはいけない何か あるのかもでやすね。
忘れたくても忘れられない嫌な記憶もいっぱいありやすが
この記憶は 忘れずにいたいでやすね。
ぼんぼちぼちぼち
そうそう、大人になると フィルターをかけて物事に接してしまう
というの大きいでやすよね(◎o◎)b
まだフィルターの形成されてない幼児の頃って、
何事もストレートに 自分だけの感じ方・解釈をしていやしたね。
cafelamama
映画を見はじめたころのバイブルでした。
高校時代に読んで以来、
学生時代、社会人と40年近く捨てられない本でした。
松本俊夫の監督作は正直面白いとは思わないが、
2冊の本は素晴らしいですね。
寺山さんと松本俊夫。
70年代に僕が最も影響を受けた二人です。
デルフィニウム
ものすごい重さで歩けないのです。
1歳の誕生日のお祝いでお餅を背負った記憶だと思います。
でも 作られているのかもしれません。
ぼんぼちぼちぼち
そうでやしたか!
松本俊夫氏は、映像のみならず 様々な分野の表現世界の評論文を書かれてやすよね。
理論的で硬質な文体が 氏 らしいなぁと思いやす。
氏の映像作品は、好き嫌いが極端に分かれやすからね~
それにしても 松本俊夫という名前すら知らない という人が多い中
氏の著作がバイブルだったとは ちと嬉しいあっしでやす(◎o◎)b
ぼんぼちぼちぼち
あぁ なるほど、それ デルフィニウムさんが生まれた土地の行事なのでやすね(◎o◎)b
もし 作られているとしたら
もう少し大きくなって 周りの大人から
「あの時はほんとに重そうで餅につぶされてたよー」
って聞かされたイメージがリアルに形成されたのでやしょうなぁ。
リンさん
そのわりに鮮明ですね。
私のもっとも古い記憶は、やっぱり3歳くらいでしょうか。
当時住んでいた板橋のパン屋さん。
ショーケースに並んだパンが、浮かびます。
食いしん坊だったのかな(笑)
沙羅朋
コメント有難うございました^^
一番古い記憶 私にもあります
3歳頃なのかなぁ~と思いますが・・・
北海道に居りましたが だだっ広い座敷
火鉢 つららなど 冬の季節だったのでしょう~
そらへい
だいたい怖かったこと、感情がひどく高まったときのことなどが
断片的に残っているような気がします。
ですから私の場合は、情景より事柄です。
ぼんぼちぼちぼちさんの場合は情景のようで、
それは転居という環境の変化からきているのでしょうか。
komorebihan
幼稚園に入る前だから4歳位かな。
近所にある保育所から帰ったら、家に母が居た。
母に抱きついたように思う。それが、温かくて優しくて・・・
何故、それだけを覚えているのかは分からない。
もうひとつは、同じ頃だと思うけど、三輪車で側溝に落ちた。
ものすごく痛かった事だけを覚えている。(^w^) ぶぶぶ・・・
ぼんぼちぼちぼち
やはり3歳くらいでやしたか。
ショーケースのパンが目の高さかそれより高かった感じでやしょうか?
玄関ドアの記憶、何色だったかも定かではないのでやすが
そこに進んでいったことだけは確かに記憶しておりやす(◎o◎)b
ぼんぼちぼちぼち
あぁ、やはり 3歳くらいが一番古い記憶なのでやすね(◎o◎)b
火鉢につらら 北海道らしいでやすなぁ。
記憶に焼きつくほどに長いつららが垂れていたのでやしょうなぁ。
ぼんぼちぼちぼち
あぁ なるほど、情景よりも事柄だったんでやすね。
興味深いでやすね、人それぞれでやすね(◎o◎)b
あっしはやはり 視覚における記憶が強いでやすね。
引っ越して新しい家に向かう というのは
子供にとっても非常にセンセーショナルな出来事だったのだと思いやす。
ぼんぼちぼちぼち
あぁ! komorebihanさんは、触覚の記憶なのでやすね(◎o◎)b
心地よかった+の記憶と-の痛かった記憶と両方なのでやすね。
とても興味深く読ませていただきやした!
かずい
実家の…建て直す前のボロい家の…台所?
…が浮かんできました。あと、時計とカレンダーと…ネコ。
akipon
まぁ断片的に色々あるんですが、どれが一番古いのか分かりません。
ただそこでふと思い出したのは・・・むか〜しむかし・・・
なぜかいつも病院にいたような記憶があります。
ベッドに寝かされていて、そこから窓の外を見ていたような。
子どもの頃は病弱で、という話しも特に聞いていません。
それがいつ頃なのかは、さっぱり分かりませんが。
asayan
思い出せません。
いちど考えてみようかな・・・?
と思わせてもらえました。
素敵な文章を有難うございます。
なゆきし
思い出そうと努めて出てきた記憶は
何だか古い記憶というより
たまたま思い出した記憶に過ぎないようで・・・。
うぅぅ・・・
いつもまとめ読みですが
ぼんぼちぼちぼちさんのブログには
なんだか吸い込まれてしまって
PCの前でかたまってしまうことがあります。
今も、しばらくかたまってました。
かたまりながら意識は
自分の中の奥の方へと・・・。
考えさせられるな~。
ぼんぼちぼちぼち
なるほど、台所 時計 カレンダー 猫 なのでやすね。
どれもリアルに実生活を彷彿とさせるアイテムでやすなぁ(◎o◎)b
ぼんぼちぼちぼち
もしかして それは生まれてすぐの記憶だったり・・・?
akipon さん、三島由紀夫の次に古い記憶を持ってるかただったりして・・・(◎o◎)b
ぼんぼちぼちぼち
いえ、こちらこそ あっしが自己満足で書いているものに
そんなふうに思っていただけるなんて とても恐縮でやす・ぺこりっ。
ぼんぼちぼちぼち
そう感じていただけるなんて 嬉し涙ちょちょ切れでやす・ぺこりっ。
この「最も古い記憶」については、是非とも一つの記事にしたい
という思いは
ブログを始めた当初からありやした。
文字にすることで あっし自身も再認識して忘れないようにしていたいなっていう(◎o◎)b
よいこ
そんなに詩的に記憶されているから、歌も出るのですね。^^
ぼんぼちぼちぼち
ありがとでやす・ぺこりっ。
そんなふうに言っていただいちゃうと かなり照れやすf(◎o◎)
幼少の頃から 蛙とトカゲは大好きでやしたね。
あと、これは も少し大きくなってからの記憶なんでやすが
元は米国人が住んでた家なので 庭に ツリーにするように 針葉樹の木が植えられていたんでやすよ。
で、クリスマス近くになると、父がそれを鉢に移して
生木に色々飾ったのを憶えてやす(◎o◎)b
yakko
nano
MILBON
ぼんぼちぼちぼちさんのブログに巡り合えて
幸いです。日々訪問させて頂きます。
miya_syou
私の最も古い記憶は、大工の父の仕事場に連れて行ってもらった
ことですかね。お昼に父のお弁当を一緒に食べたときの、卵焼きの
味が今も記憶からはなれません!幼稚園から、小学校低学年くらい
でしょうかね。
Gamaoyabeeeen
白無垢姿で鏡台の前に座り、頬を染めていた叔母の姿がくっきり記憶に残っています。
レン
桃井かおりの、「エロスは甘き香り」を思い出しました・・・
1973年の作品です、前後に「赤い鳥逃げた?」や「青春の蹉跌」などの
出演がありました・・・。
toyo
もし、ほんとだったら、そういう生まれた直後の記憶って、残るものなのかしら?すべては夢のなかのような・・そんな記憶ともいえない曖昧な記憶が私にとってのもっとも古い記憶です。失礼しました。
ぼんぼちぼちぼち
庭で四季のうつろいを噛みしめることができたのは
とてもいい記憶の刷り込みだったと思いやす。
勿論 それが雪柳や南天であったと知ったのは
ずっと後になってからでやすf(◎o◎)
ぼんぼちぼちぼち
こちらこそ ありがとーでやす。
ぼんぼちぼちぼち
こちらこそ ありがとーでやす。
そんなふうに言っていただけるなんて恐縮でやす・ぺこりっ。
ぼんぼちぼちぼち
あぁ なるほど、微笑ましいでやすね! お父様の仕事場と卵焼き
映画のワンシーンのように目に浮かびやす(◎o◎)b
ぼんぼちぼちぼち
そういう場面が強烈に記憶に残るの 解りやす(◎o◎)b
真っ白で美しい花嫁の叔母さんと
それをとりまく いつもとはまるで違うハレの空気・・・
ぼんぼちぼちぼち
「エロスは甘き香り」恥ずかしながら観ておりやせん。
「青春の蹉跌」は好きな作品の一つでやす。
桃井さん あの役に合ってやしたね。
長谷川和彦氏の脚本も良かったでやす\(◎o◎)/
ぼんぼちぼちぼち
三島由紀夫氏の生まれた直後の記憶・・・
文学としての虚構なのか 氏自身は信じている記憶なのか
ちょい気になるところでやすね。
氏の言葉となると 妙に現実的な説得力を持ってしまいやすね。
matcha
僕の一番古い記憶は、ちょっと怖いです。
門から玄関までの飛び石に顔を打った、痛い記憶・・・。
母から聞くと、3歳位の時に、おじいちゃんの下駄をはいて
出て行って、石につまずいて次の石に、顔をぶつけたそうです。
もうひとつ、どっちが古いかわからないですが、
絶叫です。この世の痛みとは思えない痛みを味わった記憶・・。
この記憶が、次の母の記憶と合致するかは、定かじゃないですが
これはたぶん2歳も終わりのころ、パンツをはかせようと
母が替えのパンツを探しているすきに玄関へ出て行ったそうです。
数分も経たないうちに、ギャーって叫びに慌てて玄関にでたら
近くの小学生の悪ガキが、僕のおチンチンの皮を根元まで
剥がしやがったそうで・・。苦難な、悲惨な幼い日・・。
余り想い出したくない過去でした。
ぼんぼちぼちぼち
それはお辛い記憶でやすなぁ(◎o◎:
痛いというのも 強烈に脳細胞に記憶されやすものね。
それにしても 極悪非道な小学生がいたもんでやす(◎o◎:
あっしは、4歳の時に左足の親指がヒョウソウになったんでやすが
やはりその時の痛さは強く記憶してやすね。
yoko-minato
残るものなんですね。
私はあまり覚えていないのですが
母の背中に背負われていることは
覚えています。
一番幸せな時だったのでしょうか?
ぼんぼちぼちぼち
そうでやすか。 やはりとても幸せな気持ちだったので 憶えておられるのでやしょうなぁ。
背負われていた というと かなり赤んぼに近い頃の記憶でやしょうか?